工具の使い方を解説

【工具シリーズ2】工具の基本的な使い方(実践編)

こんにちは。
日本製LEDヘッドライトの日本ライティング内藤です。

 ※日本製LEDヘッドライトの特徴についてはこちらをご覧ください。

工具は、それぞれの用途に合った使い方が基本です。基本といってもそれほど難しくありませんが、使う工具によっては少しコツが必要です。

様々な工具を適正なシチュエーションで使用するには、工具のことを知らなければできません。ここでは、工具の基本的な使い方を工具別に詳しく解説します。

今回もカスタムから鈑金、コーティングの数々をお客様にしてきた自動車業界に30年以上携わる小泉さんにメンテナンス・カスタムに使用する工具について解説していただきました。

小泉さんについてはこちらを御覧ください。

前回の記事はこちらです。

【工具シリーズ1】車のメンテナンスに必要な工具の種類と購入先について解説

工具の基本的な使い方

工具の使い方を解説

内藤

今回は、工具の基本的な使い方について教えて頂きたいのですが。

例えばドライバーの使用方法の注意点やソケットレンチの使い方などです。

軽トラマニア小泉

確かに知っているようで意外と間違った使い方をしている場合があるからね。

内藤

あるあると言えば、サイズが合っているはずなのにネジをなめてしまうことでしょうか。

軽トラマニア小泉

ネジをナメた事があるんだ。

内藤

特にプラスのネジを外すときが厄介です。

あと、かけ方が悪いのか、ボルトの角をナメてしまったことがあります。

軽トラマニア小泉

よくあることだよね。

まあ、道具の基本の使い方を知れば、ある程度防げたかもしれない。それじゃあ使い方の基本をご紹介するよ。

ドライバーは回す力より押す力

工具の使い方を解説

ドライバーは、使用頻度が高い工具ですが、意外にも間違った使い方をしている方が多いです。

注意

ドライバーで回せるネジは、主にプラスとマイナスのネジですが、クルマに使用されているネジはプラスネジがほとんどです。 
 
クルマのメンテナンスでプラスドライバーはネジ外しに使用されますが、マイナスドライバーは、主にクリップ外しやこじる作業に使用される場合がほとんどです。 
 
ただし、まれにホースバンドにマイナスのネジを使用している輸入車があるので、その場合は本来の使い方としても使用されます。 

まず、プラスドライバーの使用方法ですが、押す力を7,回す力を3で使用すると言われます。しかし、実践では7:3の法則では歯が立たない場面が多くあります。

その場合は、押す力を9、回す力を1にするなど、力の配分を変えて回します。コツとしては、強く押してから徐々に回す方向に力を入れていきます。

ここで重要なのが、ネジが回る感覚。

神経を集中して、ネジの回り始めを感じ取りながら回す方向に力を少しずつ入れ、回りそうと感じたらそのまま回します。しかし、回りそうになければ、回すのを辞めます。

ここで回らないネジは、潤滑剤などを吹き付けてしばらく放置します。

潤滑剤を吹きかけることで、ネジの隙間に毛細管現象で浸透し固着したネジを緩みやすくさせます。ネジの各部に良く浸透するまで、2分から3分放置すると効果的です。

そして、ネジの頭のプラス部分の油分を拭き取ってから再度チャレンジします。

次にネジの回し方ですが、ネジが回ったら、柄の部分ではなく軸を回すと緩めたり、閉めたりが早くできます。

内藤

回りそうにない状態で、回すとネジがナメるんですね。

軽トラマニア小泉

その通りだよ。この感覚をつかむには、やっぱり数をこなさないと難しいかもしれない。

でも、回りそうなネジは、力を徐々に入れると動きそうな感じが伝わってくるよ。

内藤

なんか難しいですね。「感覚を研ぎ澄ます」ですか。ナメる感覚も知ることも大事のような気もします。

軽トラマニア小泉

その通りだよね。ネジを回すときにどの程度、無理をかけるとナメるのか、その感覚も失敗して学ぶ必要があるかもね。

ナットやボルトはサイズに合った工具を

クルマには、多くのボルトやナット、そしてビスが使用されています。カスタムする上で、パーツを固定しているボルトやナットなどを外す必要が出てきます。

例えば、ヘッドライトユニットを取り外す場合、フロントバンパーやグリルなどを外しますが、そこには数多くのボルトなどが使用されていますし、ユニットにも数カ所ボルトやナットで止められています。 ※フォグランプも同じです。

ナットやボルトは、10mmや12mmなど決まった頭のサイズがあります。外す際は、サイズにあったソケットやメガネレンチなどを使用します。

特に注意が必要なのが、10mmと11mmといった隣り合ったサイズを外すときです。

意外にもボルトなどにはまり、回せる場合がありますが、サイズが合っていないとソケットにボルトなどが噛みこみ、外れなくなってしまう場合や、ナメてしまう恐れがあるので、確実にサイズに合った工具を使用します。

工具の使い方を解説

このほか、ソケットには6角と12角の2種類に大きく分けられますが、使用目的は同じでも作業効率や外すボルトやナットの状態で使い分けたほうがよいでしょう。

12角は、ボルトやナットに当たる面が小さいですが、ボルトやナットの頭にソケットがかかりやすいメリットがあります。

そのため、手探りで工具を使う場所などでは12角のソケットなら使用しやすいでしょう。そして6角ソケットは、ボルトやナットに当たる面が広いので、大きな力にも耐えられます。

特にサビで損傷が激しいボルトやナットは、12角ソケットではナメる恐れがありますが、このような時に6角ソケットを使うと、サビたボルトやナットを傷めることなく外せます。

最近の有名メーカーのソケットは、強度や製造時の精度が高くなっているので、12角ソケットでもソケット割れやボルトやナットを破損させることはありません。

しかし、100均やホームセンターの安売りの12角のソケットは、硬いボルトなどを外すとソケットが破損する恐れがあるので注意が必要です。

ラチェットレンチの使い方

工具の使い方を解説

ラチェットレンチは、どんな種類でも右回りと左回りの切り替えが付いています。その種類は様々で、以下のようなラチェットレンチが主流です。

このタイプは、ヘッドの上部に切り替えノブがあるので、それを動かすことで左回りと右回りに切り替えられます。

このタイプは、非常に多いタイプのラチェットレンチで、初心者にもお勧めのラチェットレンチです。狭い場所でも片手で素早く指一本で回転方向が切り替えられます。

このタイプは、ヘッドの左右に突起があり、押し込むことで左回りと右回りが切り替えられます。

ヘッドの部分の横に切り替えスイッチがあるので、目視で確認できない場所の作業でも指の間隔だけで確実に回転方向を切り替えて、素早い締め・戻し作業が可能です。

また、このタイプは上部にエクステンションを差し込んでさらに違うラチェットレンチやスピナーハンドルを取り付けての作業も可能です。

これにより、奥まった狭い場所でハンドルが振れない時にもフレキシブルに作業できます。

このタイプは、ヘッド上部に丸いギア状の切り替えがあり、それを回すことで切り替えが可能です。

作業中に周りの部品や指が当たり、知らない間に回転方向が切り替わる場合があります。

このタイプは、上部の円形ダイヤルで回転方向を変えるので作業中に誤って回転方向が切り替えられてしまうことが防げます。

また、回転方向は下の画像のように、目視で回転方向が確認できる親切設計です。

工具の使い方を解説

黄色い楕円の中の印が、現在の回転方向を示しており、青が右回転のR、赤が左回転のLを表示しています。

このように操作の違いはありますが、回す方向に力が入り、反対回りがフリーになることで早回しでボルトやナットを素早く外せます。

そしてソケットをボルトやナットにかけるときに注意する点は、奥までしっかり差し込むことです。まず下の写真を見て頂くと、少し浮いているのがわかると思います。

この状態で、ラチェットレンチで回すと、ソケット及びナットを傷める原因になります。

工具の使い方を解説

そこで、ソケットをボルトなどに挿入する場合は、下の写真のようにしっかりはめてからラチェットレンチで回しましょう。

ナットには、下の写真のようにボルトが長く飛び出ている場合があります。その場合外すにはメガネレンチなどを使用します。

工具の使い方を解説

しかし、メガネレンチが入らない場所も多くあります。そんな場合ソケットレンチを使用しますが、通常のソケットでは、下の写真のようにラチェットレンチがはまりません。

工具の使い方を解説

そこで便利なのがディープソケットと呼ばれるソケットです。下の写真のように、かなり長いボルトでも十分対応できます。

工具の使い方を解説

工具の使い方を解説

※実際に取り付けた状態。ディープソケットならボルトが長くても十分ナットを回せる。

作業していると、奥まった位置でラチェットレンチが届かない場合が多くあります。その場合は、エクステンションを使用してみましょう。

工具の使い方を解説

様々な長さのエクステンションがあるので、自由に組み合わせればかなり奥まった場所も楽な姿勢でボルトなどを外せます。

トルクスレンチは微妙なサイズ違いに注意

昔は輸入車に多く使用されていたトルクスネジですが、最近は国産車にも広く使用されています。国産車では、クルマのバンパーやアンダーカバーといった部分や、ヘッドライトユニットにも使用しているクルマもあります。

また、大きなトルクスネジは、国産車、輸入車問わずドアストライカーやリアゲートの取り付けにも使用されるようになりました。

トルクスレンチには、様々なサイズがありますが、ボルトなどと異なり、サイズの違いがかなり微妙です。例えば以下の写真はトルクスネジより少し小さいビットです。

工具の使い方を解説

こちらはT27サイズのトルクスビットです。そして下がT30トルクスビットで、この違いがわかるでしょうか。

工具の使い方を解説

トルクスネジを緩める場合、サイズ違いでネジをナメてしまわないためにも、入らなくなる大きめのサイズまでビットを挿入して確かめるのがポイントです。

モンキーレンチの正しい使い方

工具の使い方を解説

モンキーレンチは、手持ちにサイズがないナットやボルトを緩められる便利なツールですが、間違って使用すると工具の効果を最大限発揮できないばかりか、工具やボルトなどを傷めてしまいます。

モンキーレンチは、下の写真の赤丸の中のダイヤルを回すと、下あごが動いてつかむ場所の広さが変わります。

工具の使い方を解説

回し方は、下の写真のように動く下あごのほうに向かい回します。逆に動く下あごに力がかかるように反対に回すと、あごにガタが出てモンキーレンチの破損につながります。

工具の使い方を解説

内藤

ドライバーだけでなく、工具には基本的な使い方があるんですね。

軽トラマニア小泉

ここで照会したのは本当に基本のことだからね。あとは作業状況に合わせて応用させることだよ。

間違った使い方はボルトや工具をダメにする

内藤

教えてもらった基本を守れば、工具もネジも傷めることなく作業できそうですね。

軽トラマニア小泉

ただし、基本を守っていても、破損につながる使い方もあるから注意が必要だよ。どんなことに注意すればよいか解説するね。

工具は基本的に叩かないこと

工具は硬い金属で作られているので、非常に頑丈です。その頑丈さを利用して、工具をハンマーのように使用する方も見られます。

もちろん、ちょっとした打撃や振動であれば、工具は壊れることはありません。

しかし、過度な打撃は工具の本来の使用方法と異なるので注意が必要です。

例えば、よく見られるのがモンキーレンチの動かないあごのほうをハンマーのようにして叩く場面を見かけます。

たしかに硬く強度がある部分ですが、ハンマーのように大きな打撃を加え続けると、クラックが発生して使えなくいなります。

このほか、メガネレンチやスパナなども同様な使い方をする方が見られますが、口径が変化して、ボルトやナットがつかめなくなる恐れがあるのでメガネレンチやスパナをハンマーのように使用することはやめましょう。

ボルトやナットなどが外れない時に力任せは破損を招く

ボルトやナットなどは、長く外していないと取り付けている場所によっては固着しています。

固着しているボルトやナットは、ここで紹介した工具で外すことは可能ですが、無理やり外そうとするとボルトやナットだけでなく工具も破損する恐れがあります。

例えば、ボルトが固くて外れない場合、より大きなトルクがかかる長い柄のついた工具を用意するのが普通です。

しかし、ボルトの大きさによっては、長い柄のトルクがかかる工具で回すと、ボルトがねじ切れることがほとんどです。

外れないボルトやネジなどは、その時々の状況や止まっている場所に応じて作業するのが望ましいでしょう。

内藤

確かに無理やり外すと後が大変ですからね。

軽トラマニア小泉

力を入れても外れないものは外れない。だから多くの場合、叩きたくなっちゃうんだよね。でも叩くなら、叩ける工具とハンマーを使用して外すことだよ。

内藤

それで、外れないボルトなどを外すにはどんな方法が効果的なんでしょう?

軽トラマニア小泉

それについては次回、じっくり解説するよ。

まとめ

工具の基本的な使い方は、回す、つかむ、叩くです。そして、それぞれの方法にあった工具が用意されているので、基本的に用途に合った使い方をしなければ工具や対象物に損傷を与える場合があります。

工具を長持ちさせるのも、そして外すボルトなどを破壊しないためにも基本的な使い方をマスターすることから始めるようにしましょう。

その他の工具についての記事はこちらからご確認ください。

この記事はこんな人が書いています

軽トラマニア小泉

カスタム・鈑金・コーティングなど自動車関連の業務に30年以上携わり、数多くのカスタムも手掛けてきた実績があります。コペンのデモカーで雑誌K-CARに何度も取り上げられる。大会に出品する車両製作を手伝い全国2位を受賞。

軽トラももちろん所有し、スバルサンバーに赤帽の赤いヘッドエンジンに憧れ換装したほか、ダイハツハイゼットでは、車高を上げて林道を走破しやすい改造や、荷台にスポットライトを増設。また、乗り心地が少しでもよくなるようにと、シートにはアトレーワゴンのシートを移植するなど、数多くのカスタムを行ってきました。 

   
TOP