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フィラメントタイプLED

【進捗状況の報告③】純正HIDのLED化商品の構造について提案がありました

こんにちは。
日本製LEDヘッドライトの日本ライティング内藤です。
 ※日本製LEDヘッドライトの特徴についてはこちらをご覧ください。

前回の近況報告から少し開いてしまいましたが、純正HID車用のLED化キットについて近況報告の記事になります。

【前回までの記事】

純正HID車のヘッドライトをLED化する商品について(D2R・D2S・D4R・D4S)

【進捗状況の報告②】純正HIDのLED化商品

ヤリス、ルークス、その他車種専用のLEDヘッドライトの開発が優先的に入ってきてしまい、こちらの商品の開発が遅れ気味となっておりますが、しっかり裏で動いております。ご安心を。

最近あった話で、「こういうのが将来あるべき形だよなぁ~」と思った事があります。

純正HID車用のLED化商品は、以前アンケートを取らせていただきましたが、比較的にニーズの高い商品と感じます。モニターとして協力したいユーザー様も多く、先日もその記事に対してコメントがありました。

皆さんにも共有した方が良と思い、個別に返信をせず、今回記事として取り上げさせていただいたのですが、メーカーと車好きな方とのやり取りで商品開発する流れが、将来あるべき形だなと感じました。

僕は、こういうのすごく良いと思っています。

技術力を持っているメーカーとアイディアを持っている車好きな方がタッグを組めば本当に面白い商品を提供できると確信しています。僕よりも少し上の世代の方には、ピンと来るかもしれません。1999年に京セラが世界で初めてカメラが搭載された携帯を販売しました。

まさに画期的ではありますが、テレビ電話用に開発されているためカメラは内側にしかなく市場に受け入れなかったらしいです。その状況をみたJ-フォン(当時)が携帯の裏側にカメラを搭載し爆発的なヒットとなりました。

カメラを外側に付けようという発想はたまたま、旅行先のロープウェイに乗っていた中年女性が、一生懸命、携帯電話でメールを打っている姿だったそうです。

同じことは私達にも言えることです。良いパターンの形が決まらないと社内であーでもない。こーでもないと話し合うだけでは、中々良いアイディアは生まれないと思います。なので、車好きなオーナー様と意見を交換することで、提案いただいた内容は違っても、それを元に新たな発見ができると感じております。

前フリが長くなりましたが、今回の件は日本ライティングとしても新たな発見がありそうな予感があります。コメント、アンケートに協力していただきました方誠にありがとうございました。

それでは、コメントに対して検証した内容を踏まえ回答させていただきます。

前提となるLEDと車について

日本ライティングのブログでお伝えしておりますが、LEDの寿命や明るさは放熱性能で決まります。そして、室内のLEDライトとは使用環境が大きく異なる車での使用(走行中の振動、雨、ホコリ、ゴミなどの混入、高温になるエンジンルーム内)は、寿命に大きな影響を与えます。

それを踏まえて頂いたご提案について解説をしていきます。

家庭用で主流となっているフィラメント型のLED

【頂いたコメント】

最近出ています家庭用のLEDでまるで電球フィラメントのようになった形のものが有りますが自動車用に同様の物はできないのでしょうか?

ご提案ありがとうございます。
確かにフィラメント型のLEDを最近よく見かけるようになりました。

色々な角度から車用ライトとして活用できるのか解説していきます。

1.寿命は?

フィラメントタイプLED
参照元:フィラメント LED電球

質問者さまは、たぶんこのような電球をイメージされていると思います。そして、現にフィラメント型のLEDは存在します。数年前から、販売されていますが、このタイプを車のライトで考えた時に、フィラメント型は振動に弱いため、すぐに切れる恐れがあります。

※前提のところでお話しましたが、室内のライトと異なり車は、走行時など振動します。

フィラメント型LED

引用元:Amazon

なぜ、振動に弱いのかというとフィラメント型の構造にあります。日本ライティングで例えると、チップの発光面全体はハンダ付けされているので自由に動けないのに対して、フィラメント型は写真の赤枠2点のみで支えているので、発光部が保持されず、自由に動ける状態にあります。

これは、垂れたロープが左右に動くイメージが近いです。
工場では、10G程度の振動をかけ壊れないか検査する耐震検査械がありますが、検査をすると、現在のタイプ(発光面全体をハンダ付け)よりは弱く、寿命に大きく影響すると考えられます

・耐震検査機
耐震検査

2.明るさは?

また、明るさについて。
フィラメント型は明るいイメージを持ちますが、現在主流となっているLEDチップよりも暗いです。

日本ライティングで使用しているチップは、ルーメン数が120lm/w以上の性能があります。小型のチップで120lm/wは中々無いですが、フィラメント型はこれよりも暗いタイプを復数社(追加)で開発・生産されています。

(ただ小型タイプではないので、厳密に言えば車用ライトとしては使用できないです)

少しイメージしやすいように実際販売しているH4タイプで考えてみます。

LEDヘッドライト H4

H4のロービーム時に点灯するチップの全長は6.85mmです。
フィラメントタイプを生産している中の1社のソウルセミコンのデータシートをもとに解説してみます。

■ソウルセミコン・フィラメント型
 φ1.7長さ38mmサイズ。(最短が38mmでした)

ソウルセミコン_LEDチップ

ソウルセミコン_LEDチップ2

チップの性能をこの表から導き出すと、

電流値・・・20mA
電圧・・・70V

計算すると1.4wになります。
明るさはMAX 250lm程度。

フィラメント長は、H4のロービームで6.85mm。約7mmにして車用のLEDに使用した場合、1mmあたり6.5lmとなり、7mmの場合は46lmとなります。

製造されている中で、38mmが一番短いので、バルブ全長を考えた時に使用は難しいですが、もし使用したとしても今の性能では暗いですね。日本ライティングの標準タイプLEDヘッドライトは、MAXが1,940lmなので、違いがより分かるかと思います。

※ここで出ているルーメン数の値は、いくら明るくなっても温度は上がらないという条件の値となります。

3.チップメーカー上位4社の動き

また、別の角度からフィラメント型のLEDについて考えてみると、チップメーカーの製造状況が参考になると思います。LEDチップの上位グループは詳しい方ならご存じの通り、

  • 日亜
  • OSRAM
  • LUMILEDS(Philips)
  • CREE

この4社となります。
もし、フィラメント型が車用ライトとして優れているのであれば、上位4社で既に製造していると思いますが、現時点でフィラメント型の取扱いは無いと思います。

また、色々なチップメーカーの商品を長年テストしていて、上記の4社以外のメーカーについて品質的にどうなのかという疑問が残ります。

もし、取扱が有ったとしても日本ライティングとしては、上記の内容を踏まえ取扱うことはないと思います。

4.放熱性は?

チップの放熱方法には2種類あります。下図はチップの裏側の構造を表したものでAパターン、Bパターンあります。

Aパターンについては、カソード・アノード以外に放熱部があり3つの部分から放熱します。Bパターンには、放熱部はありませんので、放熱はカソード・アノードからのみ行うイメージです。

このAとBパターンですが、どちらが良い・悪いというわけではなく、下記のように考えるのが正しいです。たとえば、同じサイズ(5mm×5mm)のLEDチップがあるとします。

チップ放熱

  • Aパターン:カソード+アノード+放熱部
  • Bパターン:カソード+アノード

それぞれ設置されている部品で放熱となるので、図を見てもわかるように表面積ではAパターンが勝ちます。

LEDヘッドライトのヒートシンクには歪な形がよく用いられますが、あれは表面積を広くしようとする工夫。表面積が広ければ放熱しやすくなるので、チップでも同じことが言え、表面積が広いAパターンの方が放熱性は優れます。

その内容を踏まえると、フィラメント型の放熱性はどうでしょうか。

フィラメント型LED

引用元:Amazon

フィラメント型は赤丸部分からのみ放熱。もちろん、青線部分から赤枠への熱移動はできるように設計されていると思いますが、表面積が狭いためフィラメント型は放熱が難しいと考えます。

放熱性能が劣ると言うことは、チップ自体明るくできないので、車用のLEDとしては使用しにくいという答えになります。

フィラメント型をまとめると

ソウルセミコンのスペックとこれまでの内容を踏まえると、

  • 明るさ・・・MAX電流値で250lmの明るさ
  • 耐久性・・・2箇所でフィラメントを支えている
  • 放熱性・・・表面積が狭い

まとめると、

  • 振動に弱い
  • 放熱性が悪い=電流値を上げることができない(そもそもMAXで20mA)
  • ジャンクションMAXが低い(≒耐熱温度ではないけど近いイメージ)

フィラメント型は耐久性が低く、明るくすると更に寿命は短くなると考えられます。

空洞のアルミの三角柱

【頂いたコメント】

角の空洞のアルミの三角柱にLED素子を3面に張り付ける形では配光に問題が出るのでしょうか?

2から3にLEDが増えるわけですから同じLED素子を使う場合の30-40%増しの光度が出ないのでしょうか?

それでいて3角中空ですので空気の流れがファンに導かれやすくなり冷却を助けるのではないでしょうか?

質問者さまの内容を元に図に起こしてみました。

3面LEDバルブ

  • 赤四角・・・LEDチップ
  • 赤点・・・中心(=フィラメントバルブの発光中心)
  • 黒丸部分・・・空洞

実は、日本ライティングでも三角柱の構造は面白いと考え、実験をしていました。実験で気づいたことは、チップ部分の冷却の可否ではなく、中心(赤点)からチップまでの距離が長くなることが大きな問題でした

下の図を御覧ください。

数値はマル秘なので伏せておりますが、3面タイプ(A)と通常タイプ(B)でフィラメントバルブの発光中心からの距離を計測すると3面タイプの方が長く、距離が長くなるにつれ配光は出なくなります。というよりは、焦点がぼやけてしまいます。

メーカーとしては中心点からの距離を極力0になるように構造を考え、製造をしている状況です。面白い構造だと思いましたが、配光面で課題が浮き彫りになりました。

では、放熱の面ではどうかというと、空洞内を冷却できれば、側面タイプより放熱性は上がると考えられます。しかし、冷却をするために空洞内にファンを設置する必要がありますが、風を送ることで防水ができなくなるので、製品化は難しいです。

※超小型ファンを、防水のラインより前に設置すれば良いかもしれませんが。。。

実験結果では、配光・放熱の実現性で難しいという判断を下しています。

まとめ

色々な角度で頂いた提案(フィラメント型・三角柱タイプ)ですが、純正HID用のLED化商品への適用は難しいかと感じました。

今回ひょんなことから、みんカラユーザー様からコメントをいただきました。多くの方が見ているブログにここまで自分の考えを言うのは、とても勇気がいることです。勇気を振り絞りコメントをいただいたこと大変感謝いたします。

そして、このような検証記事を公開することができ、皆様にまたLEDについてマニアックではありますが(笑)情報発信できたことを嬉しく思います。

冒頭で書きましたカメラ付き携帯の件ではありませんが、きっと頂いた内容を元に色々な化学反応が起き面白い商品を提供できるのではないかと思ってますので、その他の方も何かあれば気軽にコメントやメッセージを頂ければ嬉しいです。

ではでは。

【前回までの記事】

純正HID車のヘッドライトをLED化する商品について(D2R・D2S・D4R・D4S)

【進捗状況の報告②】純正HIDのLED化商品

   
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