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カーコーティング剤は冷蔵庫や常温で保存、どれが正しい保存方法なのか。【コーティングQ&A】

こんにちは。
ガラスコーティング剤の独自ブランド(ゼウスクリア)を展開する日本ライティングの内藤です。

食品には賞味期限や消費期限がありますが、カーコーティング剤の薬液は食べ物ではないし、一体いつまで使用できるのか疑問になる方も多いと思います。

この記事ではカーコーティング剤の保存について化学的な観点から解説していきます。

カーコーティング剤の正しい保存には、まず成分を知ること

ゼウスクリアガラスコーティング剤

カーコーティングには「硬化型」と「非硬化型」のタイプがあります。硬化型コーティングは空気中の水分と反応することで硬化皮膜を塗装表面に形成するのに対し、非硬化型のコーティングは塗装表面に乗っているだけです。

それぞれについて成分ごとに分解して考えてみましょう。

①カーコーティングの構成要素-バインダー成分

バインダーは硬化型コーティングの主役となる成分で、シリコーンオリゴマーやシラザンといった水と反応する構造を有する成分です。

水分がない密閉環境であれば水とは反応しないので、固まったりはしません。

しかし、硬化触媒(※後述)が共存する状態で空気中に放置すると、水分と反応して硬化します。

また、硬化触媒が共存する状態で密閉し水分がない状況で保存した場合でも、触媒による副反応によってバインダーが徐々に結合し、粘度が少しずつ上がります。

触媒による副反応は水分との反応よりずっと遅いですが、数ヶ月単位の時間をかけてゆっくりと進行します。

②カーコーティングの構成要素-撥水剤(反応性)

前述のシリコーンオリゴマーやシラザンといった成分と同様、水と反応する構造を有しており、空気中の水分と反応します。

シリコーンオリゴマーやシラザンが水分と反応して膜を形成する際に取り込まれ、一体化することで撥水機能を付与します。

撥水剤は長く連なった鎖のような分子構造をもっている点が特徴で、主にシリコーンポリマーやフッ素ポリマーが使われています。

③カーコーティングの構成要素-撥水剤(非反応性)

構造は②に示す反応性の撥水剤と似ていますが、水と反応する構造を持たない点が特徴です。

したがって、反応性の撥水剤とは異なり硬化膜と一体化しませんが、水分について気を使う必要がなく扱いやすいため、気軽に使える簡易コーテインングによく配合されます。

④カーコーティングの構成要素-硬化触媒

シリコーンオリゴマー、シラザン、反応性撥水剤などの水と反応する成分を、空気中の水分と効果的に反応させるための触媒です。

これがないと、硬化型のコーティングは皮膜形成ができません。

一方で、副反応も誘発する作用があり、バインダー成分と触媒を配合した状態で水が入らないように密閉保存しても、バインダー同士を結合させる反応がゆっくりと進行するので、粘度が少しずつ上がります。

⑤カーコーティングの構成要素-溶媒(希釈剤)

カーコーティング剤を薄めて塗りやすくするための成分で、膜には影響をあたえません。

石油系の炭化水素がよく用いられますが、特に反応する構造は持たないため、そこまで保存性に気を使う必要はありません。

しかし、ガソリンや灯油などと同様に空気酸化によって少しずつ劣化するので、保存するときは空気に触れないように保存することが重要です。

密閉が甘い状態で1年単位で保存したものは古くなっている可能性があります。

カーコーティング剤の保存性は保管環境に影響される

化学製品のパッケージの裏面には、「冷暗所で密閉して保管してください」と記載がありますが、これは一体どういう意味なのでしょうか。

この注意書きには、

①涼しい場所で保存すること
②暗い場所で保存すること
③密閉して保存すること

3つの条件が書かれています。それぞれについてその背景を解説します。

①涼しい場所で保管する意味

化学反応は一般に、温度が高ければ高いほど早く進行します。エンジニアの世界では「10℃2倍の法則」という法則が知られており、温度が10℃上がるごとに、反応速度は大体2倍になると言われています。

これはあくまでも経験則なので、10℃2.5倍速になる場合もありますし、10℃1.5倍速になる場合もあり、多少はずれてしまいますが、少なくとも単なる比例関係ではないということです。

具体例で考えてみると、温度が20℃から40℃の2倍になった時、反応速度は2倍になるのではなく、2×2で4倍も速くなるのです。

カーコーティング剤はいつでも塗れるようにしたいから車の中に置いておく人もいるかもしれませんが、夏場の車中温度は80℃くらいまで上がることもあります。

その場合、室温を20℃と仮定すると、2×2×2×2×2×2=64倍も反応が速く進行します。

この状態ですと、室温では十分遅くて無視できていた副反応も進行するようになり、硬化型カーコーティングの薬液がドロドロしてきたり、最悪の場合ゲルのように固まってしまうこともあります。

非硬化型コーティングには触媒が含まれないので副反応の心配はありませんが、水と撥水ポリマーを乳化して均一にしてあるようなエマルジョン製品は、水と撥水剤が分離してしまう事があるので、硬化型・非硬化型を問わず高温は避けた方が良いでしょう。

従って、カーコーティング剤も涼しい場所(冷蔵庫など)で保存した方が、劣化を最小限に抑えることができるのです。

②暗い場所で保存する意味

以前の紫外線に関する記事でも触れたように、太陽光の中には強いエネルギーを持つ紫外線が含まれており、これにより化学結合が切断されることがあります。

たとえ涼しい場所で密栓して保管していたとしても、紫外線が当たり続けると保管容器の中でコーティング剤の成分が劣化し、本来の性能を発揮できなくなる可能性があります。

涼しい部屋で過ごしていても、窓からの日光に当たり続けると日焼けしてしまうのと同じですね。

世の中には、光に当たると分解してしまう不安定な化合物もあるので(カーコーティングではほぼ使われませんが)、化学品はとりあえず光が当たらないように保存するのが常識なのです。

③密栓して保管する意味

密栓して保管することで、空気中に含まれる湿気や酸素の侵入を防ぐことができます。

硬化型コーティングの成分は水分と反応することで硬化するので、湿気の混入を防ぐことで水分との反応を防ぐことができるわけですね。

また、酸素もゆっくりではありますが化学品を劣化させる要因です。例えば天ぷら油も酸化によって変質しますし、ガソリンや灯油も古いものは使わない方が良いといわれているのはそのためです。

硬化型ガラスコーティング剤の保管・使用方法

コーティングのメリット・デメリット

硬化型ガラスコーティング剤には1液型と2液型の2種類があります。1液型とは硬化触媒を配合したタイプで、2液型は硬化触媒を分けておいて使用直前に混合して使うタイプです。

2液型は触媒を分けているので液を混合しない限り保存安定性は良いですが、触媒と混合してしまうと水分を遮断していても反応が少しずつ進行してしまうので、混合後極力早く使い切る必要があります。

一方で、1液型は最初から触媒が配合されているタイプなので使いやすいですが、保存安定性は2液型に劣ります。

一般的に、触媒を混合していないガラスコーティング剤であれば冷暗所で保管すれば1年程度は使用可能とされます。(冷蔵庫での保管が最も良いです)

1液型の製品には、メーカーはどの程度なら保存が効くかをチェックし「使用期限」を明記している場合が多いので、その期間内で使い切るようにしましょう。

いずれにしろ、増粘したコーティング液を塗布してしまうと早く固まってしまい、拭き上げて均一に仕上げることが困難となり施工に失敗してしまいますので、使用前は増粘していないか、色や臭いが変化していないか確認してから使用しましょう。

非硬化型カーコーティング剤の保管・使用方法

非硬化型コーティングの成分は反応性の構造を持たないため、1液型の製品と比較すると保存性が良好です。

冷暗所で密栓して保存すれば、成分そのものが変質することは殆ど考えなくて良いでしょう。

しかし、非硬化型コーテインング剤でも保存に注意する必要があるものがあります。例えば、水と混合したエマルジョン型の製品の場合は、時間の経過とともに水と撥水成分が分離してしまう事があります。

分離してしまったコーテインング剤は施工性が悪化しており、吹き上げても膜が均一に仕上がらない場合があるので、使用前に液が均一かどうか確認すると良いでしょう。

もう一つは、簡易コーティングの製品の中には加圧スプレー缶の中に充填された形態の商品がありますが、このような製品は高温に晒されると内圧が高まって破裂する可能性があります。

上記のように、非硬化型コーティングは物質としては安定ですが、製品形態として保存に注意が必要な場合がるので、やはり冷暗所で保存することが重要です。

カーコーティング剤の保存についてのまとめ

今回はカーコーティング剤の保存方法について解説しました。

食品と違ってコーティング剤の保存方法が分からない人や昔購入したカーコーティング剤が使えるか、いまいち判断ができない人は、今回のような背景を理解していればある程度、ご自身で判断できるようになります。

以下に製品形態別の保存方法をまとめます。

①硬化型コーティングで1液型の製品は冷暗所に密栓保管し、メーカーの使用期限内に使い切りましょう。使用前に増粘や変色がないか確認しましょう。

②硬化型コーティングで2液の場合も冷暗所に密栓保管し、混合前は増粘や変色がないか確認しましょう。混合後は少しずつ副反応が進行してしまうので、なるべくはやく使い切りましょう。

③非硬化型コーティングは硬化型コーティングに比べて成分は変質しにくいですが、製品形態によっては分離する恐れがあるので、冷暗所に密栓保管しましょう。

特に、スプレー缶に充填された加圧タイプの製品は高温にさらされないように十分注意しましょう。使用前は分離や変色がないか確認してから使用しましょう。

まだ使えるコーティング剤を間違って捨ててしまうのは勿体無いですし、一方で変質してしまったコーティング剤を使ってしまい施工に失敗してしまうのも悲しいので、今回の記事を役立てて快適なカーライフを送っていただければと思います!

   
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