こんにちは。
ガラスコーティング剤の独自ブランド(ゼウスクリア)を展開する日本ライティングの内藤です。
滑水コーティングとは、文字通り水滴が転がりやすいコーティングのことを指します。
ボンネットやフロントガラスに付着した水滴がコロコロ転がり落ちていく動画を、一度は見たことがあるのではないでしょうか?
もっと近くから撥水/滑水具合を撮ってみました📹
今日もバチバチに弾いてます😳 pic.twitter.com/ly3hhjIu0y— 日本製LEDヘッドライトの日本ライティング (@nihonlighting) August 5, 2022
今回は、滑水コーティングに焦点を当て、なぜ、水が転がるのか?その仕組み。そして、使用されている成分について解説していきます。
目次
水の転がりやすさは「滑落角(かつらくかく)」という指標で比較します。水滴をコーティング表面に乗せて傾けていった際に、水が転がり始める角度を測定します。
つまり、滑落角が小さければ小さいほど、水が転がりやすいことになります。
一方で、水滴が大きければ大きいほど転がりやすいので、比較をするときは同じ水滴の大きさで比較しなければなりませんが、製品パッケージに水滴の大きさは記載されていないことが多いです。
メーカーも評価方法を公開しているわけではないので、異なるメーカーの製品どうしを比較するのは難しいのが現状です。
しかし、車のフロントガラスの傾きは概ね25°~45°程度であることが多いので、一般的には滑水コーティングは滑落角が25°を下回るように設計されています。
滑水ガラスコーティングは水を玉のように弾いて転がり落とす性質があるので、撥水性を持っています。
バチバチに弾いていて
気持ちいいです😊 pic.twitter.com/5kzS9BlRMf— 日本製LEDヘッドライトの日本ライティング (@nihonlighting) August 3, 2022
一方、撥水コーティングの中には、水を玉のように弾いても水滴が転がりにくいものもあり、すなわち滑水性が低い撥水コーティングもあります。
したがって、「撥水コーティングの中でも特に水を転がす性質を持つものが滑水コーティング」と考えるとよいです。
市場には疎水・親水コーティングといったものもありますが、これらは水が表面に広がり、そもそも水滴が生じにくいので、滑水にはなりません。
雨が降り水滴が車体に残ったまま蒸発すると、ミネラル分が析出(せきしゅつ)して水垢汚れが発生します(イオンデポジットと呼びます)。
滑水コーティングを施工することで、水滴が転がり落ちて車体に残りにくくなるので、雨の日の後も水垢汚れが残りにくくなります。
また、雨などが降ると水滴が自然と汚れを流れ落としてくれるため、花粉や黄砂に対してある程度のセルフクリーニング作用があります。
また、フロントガラスに滑水コーティングを施工すると視認性が改善され、大雨の日の安全性向上にもつながります。
このように、花粉・黄砂・大雨の時期に効果を実感できるため、特に春先から夏にかけての施工がおすすめです。
一方で、滑水コーティングを施行すると表面がスベスベになるので、車体やガラスに傷が付きにくくなるといった噂がありますが、コーティング膜の厚さは1μmよりも薄いので、傷から保護する効果は小さいと考えられます。
あくまでも汚れがつきにくいコーティングであると理解すると良いでしょう。
水が転がる性質は「滑水成分」によって生み出されます。滑水成分は、鎖のように原子が連なった構造を持ち、その鎖の長さや鎖を構成する元素によって滑水の性能が決まります。
一般的に、鎖の長さが短いと、撥水・滑水性落ちてしまいますが、粘度が低いので施工性は良くなります。
逆に、鎖が長すぎても、滑水性や施工性が悪化したりするので、丁度良い長さがあり、メーカーは日々最適な構造を目指しております。
また、鎖を構成する原子も重要です。
一般的には滑水性に優れるシリコンが用いられていますが、フッ素を用いると油汚れがつきにくいコーティングになります。
これは、フライパンのフッ素コーティングをイメージし当ていただけると良いと思います。
各メーカーは、様々な構造の滑水成分を開発・配合することで、性能を競っている訳ですね。
それでは、滑水成分が車に施工されると、どのように性能を発揮するのでしょうか?とあるフロントガラス用滑水コーティング剤の成分表示には、シリコーン、アルコール、酸が含まれていると記載があります。
このコーティング剤をフロントガラスに塗ると、ガラスの表面にはヒドロキシ基(OH基)が存在するので、滑水成分であるシリコーンとガラス表面のヒドロキシ基が硬化剤である酸によって直接結合すると考えられます。
ちょうど、フロントガラスに滑水成分をナノレベルで「植え付ける」イメージです。
このように、ガラス表面に滑水成分が結合することで、滑水性能が発揮されます。
一方で、ボディ向けの滑水コーティングには、滑水成分のほかに、膜を厚くして艶を出すために造膜材が配合されています。
ポリマーコーティングのような簡易的なものですとワックスなどの非反応性の樹脂が配合される事が多く、ガラス系コーティング剤ですとシリコーンオリゴマーやシリコーンレジンといった反応性の樹脂が配合されています。
また、ガラス系コーティングのような反応性のボディーコーティングには、硬化剤として酸の代わりに有機チタンなどの金属触媒が使用されます。
これは、金属である車体に酸を塗布すると腐食してしまう可能性があるためです。
このボディ向けの滑水コーティング剤を施工すると、各成分は空気中の水分(H2O)のOH基と反応しながら滑水成分と造膜剤が一体化する事で、滑水性を有する厚みのある硬化膜が形成されるのです。
厚みのある膜を形成する点において、フロントガラス用の滑水コーティングとは少し仕組みが違うことが分かりますね。
ところで、最近ではボディーコーティングとして、DIY用ガラスコーティング剤を施工する方も増えてきました。
ガラスコーティングは造膜剤としてガラスの前駆体であるシリケートやポリシラザンが配合されており、空気中の水分と反応して文字通りのガラス膜を形成する製品です。
例えば、とある滑水ガラスコーティング剤の成分表示には、液状シリカとイソプロピルアルコールと記載があります。
液状シリカは撥水・滑水性が付与されたシリケートと考えられ、硬化により撥水・滑水性を有するガラス膜を形成する成分です。
また、イソプロピルアルコールはただの溶剤ですので、硬化剤は含まれていない事がわかりますね。
もう一つの例として、ポリシラザンを用いた滑水ガラスコーティング剤です。
ポリシラザンは撥水・滑水性能とガラス被膜を兼ねており、硬化により撥水・滑水性を有するガラス膜を形成する成分です。
弊社のポリシラザンを用いたハイブリッドガラスコーティングは、有機ポリシラザンが造膜と撥水作用を兼ね、そこにもう一つの造膜成分である無機ポリシラザンを配合することで、膜をより強固なガラス被膜に近づけています。
商品を選ぶにあたり、どんな物質が含まれているか成分表示を見てみましょう。
まず、成分表示に「酸」という表記がないか確認しましょう。硬化促進剤として酸を含んでいるコーティング剤はフロントガラスへの施工を想定しており、金属に対して施工すると金属部材が腐食してしまう可能性があるので十分注意しましょう。
次に、成分表示に「トルエン」「キシレン」「シンナー」といった表記があるかチェックしましょう。
これらの溶剤は人体に対して毒性が強く、大学や化学企業などの専門家が取り扱う溶媒です。
また、トルエン、キシレン、シンナーといった溶剤は、プラスチックを溶かす性質が強く、昔から塗料などを溶かしたり薄めたりする用途で使用されてきた背景もあり、これを車の樹脂部材に塗ってしまうと樹脂部材が溶けてしまう可能性があるので十分注意しましょう。
今回は滑水コーティングについて解説しました。滑水性に優れたコーティング剤は、春から夏にかけて施工することで花粉や黄砂などの汚れから車を守ってくれますし、大雨の時も視認性を確保してくれるため、おすすめです。
また、今回は商品の選び方についても解説しましたので、店頭で成分表示を見ながら、自分に合ったコーティング剤を楽しみながら選んでいただけると幸いです。